映画”海街diary”と家族の話
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みなさんこんにちは
恋愛セラピストの青木大です。
先日"海街diary"という映画が公開されました。
吉田秋生による漫画作品が"そして父になる"などの作品の監督を務める是枝裕和の手により映画化されたものです。
親と子を考えるのに面白い作品なのでここで取り上げてみたいと思います。
あらすじ
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鎌倉で暮らす三姉妹の元に、自分たちが幼い頃に離婚して家を出て行った父の訃報が届いた。次女・佳乃は15年以上会っていない父の死を特に何とも思えず、三女・千佳も父との思い出がほとんどなく、佳乃と同じ気持ちだった。それでも長女・幸の頼みで葬式に出るために山形へ赴いた佳乃と千佳は、そこで年齢の割にしっかりしている中学1年生の異母妹・すずと初めて出会う。
既に母も亡くしていたすずは父の再々婚相手の家族と暮らしていた。気丈だが感情を見せないすずに対し、葬儀の打ち合わせで会った亡父の妻は頼りなく、佳乃はすずの今後について安請け合いする亡父の妻に不信感を抱く。妹たちと違って記憶が確かな幸は父を許せず、夜勤を口実に欠席するつもりでいたが、妹からのメールで事情を知ると、徹夜を押して急行して葬式に出席する。葬式からの帰り、すずは幸から亡父のことで感謝の言葉をかけられ、堪えていた感情が爆発するように号泣した。幸はそんなすずに「鎌倉に来て一緒に暮らそう」と誘い、すずは快諾した。
そして、四十九日を済ませた翌週に、父を亡くした地を後にしたすずが鎌倉の異母姉たちが住む一軒家に引っ越してきた。異母妹を「四女」として迎えた香田家の新たな共同生活が始まる。
--- Wikipedia 海街diary より
長女"幸(さち)"
本作の中心は"家族が再び家族になる"ことなのですが、ここでは登場人物の一人、長女"幸"の人生にフォーカスをあてて親と子の話をしていこうと思います。
幸に関してこんなシーンがあります。
- "ちか、ご飯かきこまない"
- "ちゃんと布団で寝なさい"(居間で酔い潰れる妹たちに対して)
そう、もはや幸は"長女"ではなく"お母さん"をやっているのです。
もちろん幸には家庭以外にも仕事など生活があるわけですが
- 仕事でキツイ仕事を頼まれる、任される
- 恋愛で身勝手になれない
など、家以外でもその特性をもったまま過ごしています。
親の肩代わりをする子ども
こんな風に長女である幸は家族の中で親の役割を担っています。またそれは彼女の家の外での人生をも支配しています。とりわけ彼女の人生にとってマイナスに働くのは、家族のことを優先するあまり、自分自身のことを優先出来ないことです。作中、幸は交際相手である同僚の椎名に"一緒にボストンに来てくれないか"(結婚して一緒に来てくれないか)と言われ、妹たちにも"すずのことは私たちがいるから大丈夫だよ"と言われていますが、結局幸は日本に残ることを選んでしまいます。
家族は彼女が結婚して家を出て行くのを応援しているのにです。結局のところ彼女自身が勝手に自分を縛り付け、自分を優先することを禁止しているのから抜け出せないのです。
彼女にそうさせているものはなんでしょう?
いや、彼女にそうさせている感情はなんでしょう?
それは次のようなものです。
- ひとつには、"自分が家をちゃんと守っていたら、いつか親が戻ってきて、また元通りに暮らせるかも"という儚い期待があります。もっとも、父はすでになくなってしまっているし、叶わぬ想いなのですが、子どものころに抱いただろうその想いは今も幸の中に残り続けることになるのです。
- もうひとつは"ツライ気持ちに向き合わないでいるため"です。幸たち三姉妹は、父と母に見捨てられてしまった子どもたちです。作品の描く時間では大人になっているためにほとんど描かれることはないですが、そこには大きな悲しみやや恐れ、将来に対する不安などがあったはずです。
ともすると耐えられないそのツラさですが、自分が親という立場をとることで実は回避することができます。もちろんこちらはこちらで簡単なことでも楽なことでもないですが、それでも"見捨てられた子ども"という立場に身を置かないでいることができるので、当面そのツラさ・悲しみと向き合うことは避けられます。その意味で、親の役目を担うことで、幸の心は幸が深く傷つくのから守る働きをしているのです。もちろんそれは無意識的にやっていることなのですが。
一見すると"献身的ないい人"という日本人の美徳をもった人のようにもとれるのですが、そうではなくて実は幸は無意識的に自分を守るために自己犠牲の人生を生きているのです。
おわりに
親の務めとはなんでしょうー
これはフィクションの話ですが、現実の家庭で起こっている様子をリアルに表しています。いやむしろ、その大変さが描かれていないという意味では現実の方がもっと過酷でしょう。親がいなかったり、その役目を放棄するとき、代わりにそれを担う子どもが現れる。子どもでいられない子どもがでてくるのです。必ずしも悪い面ばかりではありませんが、長い目でみれば往々にして自分の人生、自分の幸せをつかめないことになりがちです。子どもにそんな業を背負わせないように自らがちゃんと親の仕事をすることが親の第一の役目です。
そういったことを4姉妹の人生を通して教えてくれる作品でした。
自分以外の人が家族との関係の中でどんな人生を生きているのか、それを垣間見せてくれる"海街diary"よければぜひ見てみてください。
P.S.
親が機能しないことで子どもが子どもらしく生きられない、いわゆる"アダルトチルドレン"に関しては友人の吉野リョータさんが専門のカウンセリングをされているのでそちらをチェックしてみてください。